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神里達博さん

神里達博の「月刊安心新聞+」

 今年もまた、「薬」が不足しているらしい。特にせき止めが足りないという。最近は毎年のように、そんなニュースが報じられている。いったい原因は何なのだろうか。

 まず、「引き金」となったのは、2020年から翌年にかけて起こった後発医薬品メーカーでの一連の不祥事である。医療用医薬品は一般に先発品(新薬)と後発品に分かれる。後者は「ジェネリック医薬品」とも呼ばれ、新薬の特許が切れた後に、製造販売される同等品のことを指す。

 最も重大な事件は、福井県の「小林化工」のケースである。水虫などの真菌症を治療するための経口薬に、通常の使用量の10倍から20倍の睡眠導入剤の成分が誤って混入していたというのだ。その結果、服用した人の中から、意識の消失や自動車事故を起こしてしまうなどの被害が出た。また因果関係ははっきりしないが、死亡例も報告されている。

 その後の調査の結果、同社では多数の「GMP違反」が発覚する。GMPとは、医薬品の製造や品質管理に関する基準である。いわゆる「サリドマイド事件」を契機として1963年に米国で法制化された。同様の仕組みは日本にも導入されている。

 また、他の後発医薬品メーカーに関しても、行政などが立ち入り検査を実施したところ、複数の社で問題が発覚、業務停止などの処分となった。こうして、一気に供給が減り、薬不足が生じたとされる。

 しかし、すでに最初の事件発覚から4年が経っている。なぜいまだに安定供給が実現しないのだろうか。

 厚生労働省も事態を重く見て…

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